カビとは
自然界において微生物の果たす役割はきわめて重要で、中でもカビは自然界の掃除屋として栄養分を循環していますが、まずはカビの生態について少し考えてみる必要があります。
動植物が豊富で季節変化も温和な条件下ではカビは数を増し、相互作用も盛んになりますが、周期的条件変化が著しい場合は生育し得るカビも限られ、かつカビ自身の多様性が要求されます。
力ビ生息の最適温度は
カビが生息する最適な温度ですが、カビの発育とそれに伴う代謝系は多くの酵素の相互作用の結果といえます。
したがって、カビの活性は最低温度で始まり、最適温度で最も活発となり、最高温度で止まります。
一般にカビの発育量は、最低温度が5〜10度ででもよく発育する特性があります。
一般的なカビは、60度の環境におかれた場合、短時間で死滅しますが、乾熱では70度では、20時間でも死滅しません。
多くの力ビは微酸性を好みますが、環境に対する適応性が早く、カビ自身の代謝作用によって周囲に変化を与え、多くの場合、酸性に傾けます。
従来力ビは葉緑素をもたないところから光の影響は受けないといわれていましたが、多くのカビは光に反応します。
近年、力ビの子実体形成に関与する光の影響について研究が進められています。
力ビの生息範囲
この地球上で力ビの生育する範囲は、空気のあるところにはどこにでも生息しています。
たとえば数千メートルの深海から南極圏、北極圏のような極地、砂漠地帯にも生息しています。
植物上や地表部の基質に生育するカビの多くは空気中に胞子を飛散、放出させています。
空中に舞い上がったカビの胞子は単独または他の浮遊塵埃、微細水滴などに付着し、気流に乗って時には16500フィートの高空に飛散するカビもあります。
このような上空で捕えられるカビも珍しいカビではなく、地上でごく普通にみられるベニシリウム、アスペルギルスやクラドスポリウム、アルタナリアなどです。
カビの分布は上空にいくほど菌数は少なく、単純になる傾向はあります。
また、カビはわれわれが考えている以上に低濃度の栄養分でも十分に生育できます。
生育温度範囲をみると、一6〜90度で近くまでの広い範囲に生息できますが、われわれが一般にカビと称している微生物は、最高生育温度が58度で以下、最低生育温度が0度で前後、最適生育温度が20〜25度での範囲です。
住環境に存在しているカビの種類
住居内に生存しているカビも温湿度条件によって優先的に検出できる力ビが異なることから、ある程度生育場所を分けていることがわかります。
たとえば、湿度の高い浴室や台所、比較的低温の家具の裏側、低温で湿度の高い押入れ、湿度が高く温度の高い居間などから分離できる力ビに優先順位が異なるところから、ある程度特徴があるように見うけられます。
力ビの分離には、分離方法や使用する分離培地によって検出できる力ビに著しい相違が認められることはよく知られています。
カビの生育にはそれぞれのカビに適した栄養分、温湿度があり、これらの条件がそろわなくては生育はおぼつきません。
力ビ胞子の発芽には湿度だけで栄養分は不用ですが、菌糸を伸ばし胞子を形成するためには栄養分が必要となります。
しかし、この栄養分もヒトが考えているよりもはるかに薄い栄養分で十分に生育し胞子を形成します。
そのために、まさかこんなところにカビがと驚くわけです。
そのよい例がクリーニングに出し、そのままタンスに掛けておいただけで梅雨時に力ビがでることがあります。
タリ一ニングに出した衣服はビニール袋からだし、通気に気をつけることです。
力ビの生育を人為的に抑制するには、生活環境の温度や湿度条件を制御することです。
ヒトが生活している住居内のカビを抑制するために安易な防カビ剤の使用は厳に慎まなくてはなりません。
低毒性といえども殺カビ剤であり、無意識のうちに体内に入り蓄積される可能性もあります。
カビは多くの酵素の相互作用により代謝を行って成長を続けているわけですが、それぞれの酵素は異なった適温をもっています。
力ビの温度要求は力ビの種類によって異なっていますが、力ビは生育最適温度によって高温性菌、中温性菌、低温性菌に分けられます。
住居内に生息している力ビのほとんどは中温性力ビです。
また、カビは葉緑素をもたない微生物であることから、生育に必要な栄養分は基質の栄養分を水に溶けた状態で菌体内に取り込めるように分解し、菌体内でその物質を再合成して自分に必要な細胞構成物質を作っています。
作った物質を必要な所に運び、菌体を構成するために菌糸は生長し続けるのです。
カビの生育に必要な水分は、基質中にある自由水を利用しています。
住居内のカビの水分供給源は、ヒトが生活するうえで発生する水蒸気、すなわち人体、調理、暖房、入浴時の水蒸気です。この水分と温度によって検出されるカビの種類が異なってくるということです。